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病気のお話

 

成れの果て

高血圧症,動脈硬化症の成れの果て

 

高血圧の持続によって障害をこうむる臓器(標的臓器)は、脳、心臓、そして腎臓です。 つまり高血圧を無治療のまま放置しますと、脳血管障害か、虚血性心疾患(冠動脈疾患)か、腎不全に罹患するか、いずれかの転帰をとり死亡する率が高くなります。 いずれも心血管系に破綻が生ずる結果です。

近年、高血圧を適切に治療すれば、脳卒中の発症リスクのみならず、再発を抑制し、心血管系事故(心筋梗塞など)を減少させうることが明らかになりました。 高コレステロール血症に対する治療の有効性は、冠動脈疾患の発症予防(一次)、進行阻止(二次)を目標にした大規模介入試験の成績で明らかにされています。 とくにHMG - CoA還元酵素阻害薬は、たんに降コレステロールのみによっては説明されない多様な拡張因子(血管内皮NO活性亢進,エンドセリン - I:ET - I産生抑制)の保護、血小板凝集抑制、プラスミン・アクチベーター・インヒビターI(PAI - 1)低下、血管形成促進、酸化ストレス抑制によるプラークの安定化、腎保護作用糖代謝改善、骨粗しょう症改善などの効果を発揮するとの研究成果があげられつつあります((多面的効果)pleiotropic effects)。

脳血管障害

■一過性脳虚血
なんらかの原因(降圧薬の量が多すぎた場合、消化管からの出血など)で急に血圧が下降し、一時的に脳の局所症状あるいは意識障害が現れることがあります。 動脈硬化病変によって脳動脈の内腔が狭くなると、その血管を介し血液を供給されている脳領域は、血圧低下の影響をうけ、血流量が減少(虚血)します。そのため病側と反対の手足にシビレや脱力など、脳卒中と同じ様な症状が現れ、ときには意識を失うことがあります。しかし低血圧が回復すれば、これらの症状は全く消失します。つまり低血圧による一過性の脳虚血です。このような脳の障害とは別に、脳局所の虚血状態が反復して起こる疾患があります。 反復する間隔は、一日に数回から、半年,一年に一回という場合もあります。 このような発作は、脳血栓や脳動脈のアテローム硬化病変と関連しています。 症状が一過性である理由は、比較的太い動脈(中・前・後大脳動脈,内頚動脈,椎骨脳底動脈)流域に剥がれた血栓が詰ってもすぐ溶けてしまうからです。 一般に症状は2〜15分間、多くの場合1時間内であり、長くても24時間を超えることはありません。 また CT を撮っても脳に器質的異常を認めません。 しかし発作を繰り返すうちに神経症状が回復しないことがあります。 この場合は、一過性脳虚血発作が脳梗塞の前兆(まえぶれ)であったことになります。 したがって発作を反復する場合には、MRI や脳血流の評価などで詳細な脳の変化を検査しておく必要があります。

■脳卒中
脳卒中,あるいは俗に“中風”といわれ、“突然(=卒)になにかにあたる(=中)ように倒れる”、古くは“風気にあたる(=中)”の意から呼びならわされたものと思われます。 医学的には、脳出血,脳梗塞(脳血栓)、くも膜下出血,および生まれつきの血管奇形による頭蓋内出血などを含み、総括的に脳血管障害の名が使われています。 一般に脳梗塞が脳卒中全体の70%を占めます。脳出血と脳梗塞とでは症状の現れ方がことなり、出血は急に起こり、梗塞の方は段階的に症状が進行していくのが特徴とされています。 今日では、CT、 MRI などによってこれら二つを適切に診断できるようになりました。

1. 脳梗塞

脳動脈の内腔が動脈硬化症によって狭くなり、狭くなった部位が血栓によって閉塞する結果その末梢への血流が滞り(虚血)、脳の働きが障害される疾患(虚血性脳卒中)です(急激、ないし著しい血圧低下によつて誘発されう脳硬塞の特異な病型に分水界梗塞があります。 前大脳動脈、中大脳動脈、あるいは中〜後大脳動脈の間の境界域は虚血に弱い領域があり、全身血圧の急速な下降によって血管に血栓が生じやすいと想定されます)。 脳梗塞を起こしやすい背景には次のような危険因子が潜んでいることが多いので、これらの危険因子を防止する生活習慣の是正あるいは治療を行うことが大切です。 A.高血圧 B.糖尿病(肥満) C.高脂血症 D.喫煙,また検査の上で留意すべき危険信号は、E.血液の濃縮(ヘマトクリット Hct 上昇)F.頚動脈のアテローム(超音波検査) G.血小板凝集能亢進 H.大きな血圧変動などです。

2. 脳出血 (脳内出血)
脳血管の脆い部分が破れ、脳内に出血する疾患です。 多くの場合、高血圧が原因となっています。 血圧の高い状態下、脳動脈壁の損傷部位が圧負荷に耐えられず破綻すると考えられます。 高血圧症がないにもかかわらず脳出血を起こすヒトでは、おそらく先天的に血管に脆弱な個所が潜んでいたため破れたと推定されます。 出血部位によって症状は異なり、小出血ならば軽い手足のシビレ感にとどまりますが、大出血では一気に昏睡状態に陥ることがあります。軽い出血は、脳内に漏出した血液が吸収されるに従ってその部位の脳の機能が回復してきます。出血がある程度多量ですと、元に戻らない片麻痺(半身不随),言語障害などを残します。 脳梗塞との鑑別が必要、また出血部位と大きさによって緊急に血腫の外科的切徐をきめるためにはCTを撮る必要があります。 発作時に頭痛が激しく、嘔吐をくり返し意識障害に陥る場合は、広汎な出血が疑われます。 また、脳へルニアのリスクも念頭におかねばなりません。

3. 心原性脳塞栓
症状は脳出血や脳梗塞と同様ですが、種々の基礎疾患により心臓(左心房)に生じた血栓(血小板凝集で生じた血の塊)、あるいは太い動脈(頚動脈)につくられた粥状腫(アテローム)の断片が流れ、脳の動脈にひっかかり、結果的には脳の梗塞を起こす疾患です。 心臓由来の場合、心原性脳塞栓症と呼びます。 心房細動は左心房に血栓をつくり、脳に塞栓を起こす疾患として最も注意すべき不整脈です。

4. くも膜下出血
突然、激しい頭痛発作をもって意識障害に陥り、死のリスクの高い脳血管障害です。 頭部CTにて、脳溝、脳槽(くも膜下腔)に血液がみとめられますが、腰椎穿刺で髄液が血性であること、遠沈上清が黄色調を呈すること(キサントクロミー)をもって確認されます。

虚血性心疾患(冠動脈疾患)

1. 狭心症
心筋にエネルギーを供給している冠動脈、およびその細かな分枝の血液循環が障害され、心筋が酸素不足に陥り(虚血)、前胸部、あるいは胸骨の裏に激しい痛み、あるいは圧迫感、灼熱感を訴える疾患です。 痛みほどでない不快感程度のこともあります。 また痛みが必ずしも心臓部でなく、食道部、あるいは喉元に感じられることがあります。

  • 安静狭心
    安静時に起こる狭心発作を指し、痛みは,一般に急に起こり持続する時間は短時間で、ときに左肩から上腕内側、左手に放散することがあります。
  • 労作狭心症
    身体の労作時に心筋の酸素需要が冠動脈を介し供給される酸素量を上回ると、心筋は酸素不足に陥り、狭心発作を起こします。このように運動によって誘発される病型は、労作性狭心症と呼ばれています。狭心症の原因は、多くの場合、冠動脈にアテローム(粥状腫、プラーク)が生じ、動脈が狭くなり血流が減少し心筋虚血を起こすことによるものです。
  • 冠攣縮
    いま一つの原因は、冠動脈が急に収縮し、心筋虚血を起こす型です。 平静時、早朝に起こる冠攣縮による狭心症のタイプは日本人に比較的多くみられ、異型狭心症の名で知られています。

一方、軽い運動でも発作の頻度が多くなる狭心発作は、心筋梗塞の危険がたかく不安定狭心症といわれ特別の注意を要します。(今日,不安定狭心症では微小の心筋障害が起こっているとの観点から、心筋梗塞のカテゴリーに入れられています。)。

安定/不安定狭心症
安定狭心症では、冠動脈壁に生じたプラークが安定しており、破裂や血栓形成のリスクが低い病変です。 一方の不安定狭心症では、狭心発作が頻繁に起こり、プラークが傷つきやすく、心筋梗塞のリスクが高い狭心症です。 血中トロポニンの上昇が認められることから心筋梗塞に分類されています。 診断には、201TI, 99mTcによる心筋血流スキヤン、MRI /エレクトロームCTが用いられます。

2 .急性心筋梗塞
心筋に血液を供給している重要な3本の動脈(冠動脈)の内腔にアテローム動脈硬化(多くは粥状腫と呼ばれるチーズ様の粥状腫)が生ずると内腔がせまくなります。 この粥状腫はうすい膜で蔽れていますが容易に傷つきやすい病変では、一旦損傷をうけると、そこへ血液成分(血小板など)が凝集塊をつくって動脈を塞ぎます。 冠動脈が閉塞すると血流は途絶しその冠動脈によって栄養されている心筋は酸素の供給が絶たれ、壊死に陥ります(心筋壊死)。 全身に血液を供給している左室は、1つのポンプとしての重要なはたらきをしているので、もし左室を栄養している冠動脈に閉塞が起こると、ポンプとしての左室は急性左心不全という危険な状態に陥ります。

急性心筋梗塞は急に起こる激しい胸痛が特徴です。 心筋梗塞の診断は、急に起こる胸痛(痛みは心臓部とは限らない、食道部、あるいは背部痛事もある)、心不全症状(呼吸困難、浮腫などとともに心電図上とらえられる特異的なST上昇;冠動脈の完全閉塞型、不整脈の出現)によって比較的容易です。 しかし症状が非定型的な場合があり、また不完全閉塞では、ST上昇は必ずしもみとめられません。

一般検査では、白血球増多症のほか、心筋から逸脱する生化学的マーカーとして心筋細胞質可溶性分画にあるCPK(CPK-MB分画)、GOT、 LDH、ミオグロブリンの他、今日ではH-FABP:心型脂肪酸結合たんぱくおよび筋原線緯の構成分-収縮たんぱくであるミオシン軽鎖トロポニンT( TnT )が用いられています。 これらのうちTnTは、感度と特異性にすぐれ迅速診断に有用です。 なお心電図上ST変化を伴わない不安定性狭心症でも心筋に生じた微少梗塞が血中TnT上昇として反映されることがあります。 このような不安定性狭心症では、微小心筋障害が生じているとの観点から心筋梗塞のカテゴリーに入れられています。

冠動脈に動脈硬化を生じ易い危険因子としては、A.高血圧 B.糖尿病(肥満,運動不足)C.脂質代謝異常(高コレステロール血症,高トリグリセライド血症,低 HDLコレステロール血症)D.喫煙 E.虚血性心疾患の家族歴などが重視されています。 これらの動脈硬化の危険因子を複数もち、心電図上、虚血性心疾患を示唆する所見(ST、T変化)をみとめる患者では、積極的に冠動脈造影を行い、冠動脈の狭窄病変を調べておくことが望ましいといえます。

しかし、なんの症状もなくいつの間にか経過し、偶々とった心電図で心筋梗塞と診断される例(無症候性心筋梗塞)もあります。 このような無症候性心筋梗塞は糖尿病患者に多いといわれています。 糖尿病性神経障害のため、痛覚の閾値が低下していることが一因とされています。 また高齢患者では、痛みより呼吸困難がつよくすぐに心不全となり、急速にショック、意識障害に陥りやすい傾向があります。 冠動脈の粥状腫による狭窄病変は、動脈の内腔径に対し何%狭くなっているかによって25、50、75、90%、ないしほとんど100%と表現されています。高度の狭窄病変に対しては、冠動脈のバルーン血管形成術(バルーンによる拡張療法)が行われます。 また狭窄部位に血栓が生じ、急性冠動脈症候群に陥った際には、病変部位近くまでカテーテル(プラスチックの管)を挿入し、血栓溶解薬を直接注入する治療法がおこなわれます(血栓溶解術療法)。

腎硬化症

高血圧が長年にわたり持続しますと、腎臓の細い動脈が硬化し (腎硬化症)、ついには腎不全に陥ります。 腎障害の予知には微量のアルブミン尿の検出が役立ちます。