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病気のお話

 

血圧

血圧は、不安、緊張、あるいは痛みなどに際して上昇します。 交感神経系が興奮するためです。 また一日の時間帯によって変動し、一般に朝方高く、夜間睡眠中は自然に下降する2相性のカーブを描いています(図.1)。これを血圧の日内変動と呼んでいます。 また、日によつて同じ血圧値を示すとは限りません。 そのため血圧は、5分位、安静を保つた後に測定し、臥位で測定した血圧か、座位での血圧かを記すことになっています。

 

図1 新しいJNC7と血圧の日内変動

 

血圧値を決める3つの因子

血圧は、血液を全身に送りだす(拍出)心臓(左心室)のポンプの力、心収縮により左心室から拍出される血液量(拍出量)、そして血液を全身組織に循環させるパイプの役割をしている動脈(末梢動脈)の硬さ(末梢血管抵抗)によって決まります。 したがって、血圧は次式で表すことができます。

血圧=心臓からの1回拍出量×末梢血管抵抗 左心室のポンプの力は、左心室が1回収縮するごとに拍出される血液量と脈拍数で決まります。 また、血液は、食塩(ナトリウム)を多くとるほど水分を貯留します。 さらに血液を全身におくる動脈の緊張が強く、硬くなるほど末梢血管の抵抗は大きくなります。

動脈の壁は、血液の流れに接しているうすい内皮細胞を含む内膜から外側に向って内膜,中膜,外膜の3層構造をしています。 これらのうち中膜は平滑筋細胞から成り、動脈の緊張(収縮性)を保っており、この緊張度は自律神経により調節されています。 また昇圧系ホルモン(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン,エンドセリン,アドレナリンなど)、塩分のとりすぎや喫煙のほか、精神的緊張(心理的ストレス)、寒冷などで血管緊張がたかまり、血圧を上昇させます。 高血圧症の判定は、疫学的研究の進歩によって現在は表.1に示すような基準に従って行うことが勧められています。

高血圧症

高血圧症の90〜95%は、本態性高血圧症で、あとの5〜10%は高血圧の原因が明らかな二次性高血圧とよばれるものです。 また本態性高血圧症の大部分(約90%)は、その成因に複数の遺伝子異常が関係していると考えられていますが、究極の原因がつきとめられていません。 “本態性高血圧症”と呼ばれる理由はそのためです。

血圧を上昇させるメカニズムの一つ、末梢血管(動脈)の抵抗は、動脈硬化の進行によって増大します。 また腎臓は、末梢血管(細動脈)抵抗をたかくする重要な臓器で、腎疾患の多くは高血圧を伴います。

高血圧は、腎の細動脈硬化症を増悪させ、腎は小さくなり、血圧を一層上昇させるという悪循環が成立します(図.2)。 高血圧の原因が腎疾患による場合,腎性高血圧,昇圧ホルモンの過剰分泌を来す疾患による場合、内分泌性高血圧、血圧を上昇させる薬物による場合を薬物誘起性高血圧と呼んでいます。

心理的に容易に血圧が上昇する場合は神経性高血圧とよび、その中で、受診時の精神的緊張が大きな影響をおよぼす高血圧症は、白衣高血圧、おるいはオフィス高血圧といわれています。 高血圧をひき起こす疾患を表示しておきます (表.2)。

 

図.2 Vicious Cycle (悪循環)

 

表.2 高血圧の成因分類

I.脈圧の大きい収縮高血圧
  拍出量の増加
   1.大動脈弁閉鎖不全
   2.甲状腺機能亢進症
   3.発熱
   4.動静脈ろう
II.収縮期 -拡張期とも高い血圧を示すもの
   1.腎性高血圧症
     ■慢性腎盂腎炎
     ■急性および慢性糸球体腎炎
     ■多嚢胞腎
     ■腎血管性高血圧および腎梗塞
     ■糖尿病性腎症
     ■腎硬化症
   2.内分泌性高血圧
   3.神経性高血圧
     ■心因性
     ■頭蓋内圧亢進
     ■急性ポルフィリア、鉛中毒
   4.その他
     ■大動脈縮窄症
     ■循環血液量の増加(真性多血症、大量の輸血)
     ■結節性動脈炎
     ■高Ca血症
     ■薬物誘起性(ステロイド、シクロスポリン)
   5.原因不明
     ■本態性高血圧症
〔Harrison テキストブックより、一部改変〕

 

高血圧を指摘されたヒトは、原因の分からない本態性高血圧症か、一定の検査をうけ、高血圧がどこの障害によるのか(二次性高血圧)について診断を進めことが大切です。 二次性高血圧の中には、原因を除けば一生高血圧から免れうる患者が見い出されるからです。 それは、腎疾患によるものと、昇圧ホルモンの分泌異常による内分泌性高血圧症です。

 

1. 腎性高血圧症

表に示したような腎臓病が原因となって起こる高血圧症を指します。腎不全に陥る段階では、殆んどの症例で高血圧が合併します。

 

2. 内分泌性高血圧症

血圧を上昇させるホルモンが過剰に分泌される結果起こってくる高血圧です。血圧を上げるホルモンはたくさんありますが、時々見出される代表的な3つの内分泌性高血圧について述べます。

  • A. クッシング病,およびクッシング症候群※ コルチゾール分泌過剰によって起こる高血圧
  • B. 原発性アルドステロン症※※および特発性アルドステロン症 アルドステロン分泌過剰によって起こる高血圧
  • C. 褐色細腫※※※ カテコラミン(アドレナリン,ノルアドレナリン)分泌過剰によって起こる高血圧

A,Bのコルチゾール、アルドステロンは、副腎皮質において、Cのカテコラミンは、副腎髄質においてつくられ、分泌されています。

※クッシング病,クッシング症候群
副腎皮質の束状層からは、ヒトの生命維持に欠かすことのできないコルチゾが分泌されています。 このホルモンは、血管緊張の維持に一つの役割をなしており、ナトリウムを身体に貯える方向にはたらいています。 副腎皮質コルチゾールの産生は、脳の下垂体から分泌されるホルモン(ACTH)で調節されています。 そこで下垂体にACTHをつくる細胞の腫瘍(ほとんど腺種)ができると、ACTHが副腎皮質でのコルチゾール産生を促し、過剰のコルチゾールが血管の緊張を確かめ、一方で血中ナトリウムを増加させる結果、血圧は上昇します。 今一つの病型は、副腎自体にコルチゾールを多量につくる腺種(ごくまれにがん)が生じて起こる病型、クッシング症候群です。 一般に下垂体側に病因がある場合はクッシング病と呼んでいます。

※※原発性アルドステロン症
副腎皮質の球状層でつくられるナトリウムを強力に体に貯える作用をもつアルドステロンが多量に生成・分泌されるために起こる高血圧です。 アルドステロンを産生する腺種による病型と、なにか未知の因子によってアルドステロンの生成・分泌が刺激されている病型(副腎皮質球状層の過形成による)とがあります。後の方は、特発性アルドステロン症と呼ばれます。詳しくはこちらをご覧下さい。

※※※褐色細胞種
副腎髄質(中核部分)あるいは傍神経節と呼ばれる組織(クロム親和性組織)から生ずる腫瘍で、多量のアドレナリンおよびノルアドレナリン(カテコラミンと総称する)を放出します。 カテコラミンは血圧を上昇させるはたらきがあり、頭痛,発汗,代謝亢進,高血糖を起こさせます。カテコラミンが持続的に放出されている場合は持続性高血圧を、発作的に放出される場合は、発作性高血圧を呈します。 持続性の高血圧では、高血圧の大多数(90%)を占める本態性高血圧症の症状と鑑別できないので、時々看過されていることがあります。 したがつてまれな疾患とはいえ、本態性高血圧症と診断されている患者のなかで、特に糖尿病を合併し、やせ型の場合は血中カテコラミンを測定してみる必要があります。

上記3つの内分泌性高血圧の中 Aは、顔が丸くなり(満月様顔貌)、手足は細く胴部に脂肪が多量につく水牛型肥満で、ニキビ,多毛を生ずるなどの身体特徴を示すので、典型例では視診だけで疑うことができます。 しかし B,Cは、特別な身体上の異常はなく、しばしば本態性高血圧症として治療されている可能性があります。 内分泌性高血圧において検査上共通している特徴は、3者ともしばしば糖尿病又は糖尿病に近い糖代謝障害を合併していることです。 また B,C特に Cでは血中のカリウムが低下し、著しい場合は手足の力が抜け、四肢麻痺を起こすことさえある点です。いずれにせよ、それぞれのホルモン増加を検査で明らかにすることが治療を行う上で重要です。 可能な限りホルモンを過剰分泌している腫瘍を外科的に摘出すれば高血圧から免れることができるからです。 高血圧は、肥満と合併していることが多く、また糖尿病、高脂血症(血中コレステロール、中性脂肪の上昇)、たばこなどとともに動脈硬化性疾患(冠動脈硬化 →心筋梗塞、脳卒中、下肢の動脈硬化)のもっとも重要な危険因子の一つです。